こんにちは。でんすけです。
私は設計の仕事をしています。
例えば、客先の仕様に見合うように、家のリフォームをします。
ただ設計するだけでなく、ソファーは3人掛けの電動リクライニング付き、本革、ハンドメイドなど、家具の仕様を決めて、選び、購入して家に設置するような仕事があります。
家のリフォームは例え話で、実際には別のことをしています。
救急車かもしれませんし、消防車かもしれません。あるいは元気が出るツボかもしれません。笑
でも、これだけは言えます、怪しいものは売っていません。
製品を作る会社ではないので、仕様に見合うものを購入します。
購入する部門(資材調達部)に「ネゴガール」と呼ばれる逸材が最近存在していることを知りました。
この「ネゴガール」が今後、会社を救う存在になると感じたので紹介したいと思います。
購入する流れ
私の会社で、何かを買う場合、理想の購入する流れは以下の通りです。
※でんすけ=設計です。
設計:機器を選定し発注する。
↓
資材調達部:適切な商社やメーカーから複数見積をとり比較する。
↓
資材調達部:最も安く仕様を満たす相手に決める。
↓
資材調達部:ネゴシエーション(価格交渉)し、価格決定する。
↓
商社:注文を受け、製造、納品する。
↓
設計:受領・検品に検収処理。
全体の流れでいうと変わります。
メーカーからの見積は予算を取る段階で見積をもらっています。
客先に提出する見積は、自分の設計費を含めた労務費と機器費、経費などを合わせています。
その時点で機器の見積もりをもらっていないとでたらめな見積となってしまいます。
そしてこの見積期限はとても短いのでのんびりと待っている暇はありません。
この段階では、よく取引しているメーカーの営業担当から直接、機器の見積をもらいます。
そうすることで資材調達部を通さず見積をもらい時間短縮できます。
設計:機器を選定し見積をとる。
↓
客先に見積提出
↓
案件を受注する。
↓
設計:機器を選定し発注する。
↓
資材調達部:事前に見積をした商社に再度見積をとる。
↓
資材調達部:ネゴシエーション(価格交渉)し、価格決定する。
↓
商社:注文を受け、製造、納品する。
↓
設計:受領・検品に検収処理。
購入前に見積を貰っている場合、見積をした手間というか、
対応してもらった業者を優先に発注することが多くなります。
見積にも時間がかかっています。時間がかかるということはお金もかかっています。
お金がかかっている分、メーカーは赤字となるのです。
メーカーのことを考えると仕方のないことなのかもしれません。
また、機器見積と注文する予算が合致する場合は、
ネゴシエーション(価格交渉)することはありません。
メーカーに発注する価格を下げることで、利益を上げるというメリットがありますが、
デメリットとして、資材調達部の負荷が増えます。誰しも自分の負荷が増えることはしたくないのが性です。
また注文時期が遅れて納期遅れの心配も増えます。
数千万円の超高級品を購入する時は、さすがに資材調達部がネゴシエーション(価格交渉)をしていましたが、
入社してからずーーーーーーーーーーーっとメーカーのことを考えたやり方ばかりでした。
ネゴガールの出現
最近商社の営業担当から「でんすけさんの会社の資材調達部にネゴガールがいるんです、商売にならないですよ。」
と嘆いてくる人がいました。
えっ!? ネゴガール?? 何それ??
詳しく聞くと、事細かく仕様を煮詰め一つ一つの単価を割り出して
1円でも安く契約するようにする凄腕ネゴシエータらしいのです。
ネーミングセンスが高すぎてびっくりです。
そのネゴガールは1年前くらいから資材調達担当になったらしく、
担当範囲も狭いのであまり聞くことはありませんでした。
1年経って知識や緻密な計算で頭角を現してきました。
同じ職種であれば、交流もあるし、出世競争もあるので
話題になることはよくあります。
他部署で話題になるってかなりスゴイことです。
ネゴガールの交渉術
100万円のソファーの詳細見積があったとします。
これをネゴガールがどのようにネゴシエーション(価格交渉)するかを紹介します。
材料費 400,000円
名称 数量 単価 金額
発砲ウレタン 1000cm3 @50/cm3 50,000円
本革 5m2 @20,000 120,000円
骨組み 30本 @500 15,000円
ねじ 100本 @50 5,000円
モーター 3台 @50,000 150,000円
配線 40m @2,000 80,000円
労務費 600,000円
名称 数量 単価 金額
加工 4人日 @25,000 100,000円
組立 2人日 @30,000 60,000円
配線 1人日 @40,000 40,000円
革張 8人日 @50,000 400,000円
※適当に作っています。
ネゴガールは100万円のソファーを90万円にしろと、
いきなり理不尽なことを言うようなことはしないそうです。
まずは、材料費から攻めます。
それも一つ一つ交渉します。
まず数量が本当に正しいかどうか調べます。
設計図から部品一つ一つを抜き出し、
実際に使う量より多くないか妥当な数量になっているかを調べます。
資材調達部の人が設計図を読めるって最強です。
図面の見れない素人である普通の資材調達部員にはごまかせても
ネゴガールにはごまかせません。
続いて材料の単価です。
材料のメーカー・型式など事細かく調べて妥当な単価かを判断します。
同じメーカーでも型式が変わると値段も変わりますからね。
ちょっとした上乗せも許しません。
赤字部分がネゴシエーション価格です。
材料費 312,615円(-87,385)
名称 数量 単価 金額
発砲ウレタン 885cm3 @45/cm3 39,825円
本革 4.7m2 @19,500 91,650円
骨組み 30本 @400 12,000円
ねじ 90本 @50 4,500円
モーター 3台 @35,000 105,000円
配線 30m @2,000 60,000円
材料費だけで87,385円下がります。
次に労務費を攻めます。
労務費は技術を持った人の給料を意味します。
技術料なので簡単に削ることはできません。
みなさんに馴染みがあるのは車の修理などで請求される「工賃」に値します。
単純な作業時間という意味ではなく、プロが行うからこそミスなく車に乗って安心して道路を走れるようになります。
その安心に支払う費用です。
ケチりたいのであれば、自分で部品を購入して自分で作れば工賃0円です。
技術料としてそこをケチるのは自分でやるという選択しかなくなります。
ネゴガールはそれも心得ています。
技術料の単価は絶対に変えません。
A社が1万円でできる作業を
B社がやると2万円かかったとしても
そこは安くすることはありません。
ネゴガールが攻めるのは時間です。
技術料である単価は変えずに時間を短くするよう交渉するのです。
でも、技術料の時間はそのメーカーが決めることで
購入者が決められることではありません。
そこで、材料費を攻めているからこそ技術時間も交渉できます。
材料費の数量によって時間が変わります。
例えばねじ1本を打ち付ける時間は決まっています。
ねじの本数が10本減ったらその分時間は短くなるでしょ?と交渉するのです。
・何の材料を加工するのか?
・何の材料を組み立てるのか?
・何の材料を配線するのか?
・何の材料を革張するのか?
労務費のうち、材料費が減ればそれに比例して減るものもあります。
それぞれ独自の目線で細かーーーーーーーーーーく計算して適正価格を出します。
労務費 528,000円(-72000)
名称 数量 単価 金額
加工 3.52人日 @25,000 88,000円
組立 1.76人日 @30,000 52,800円
配線 0.88人日 @40,000 35,200円
革張 7.04人日 @50,000 352,000円
下げることが難しい労務費を72,000円下げました。
ネゴガールの攻めはこれで終わりです。
値引額は、
材料費:87,385円
労務費:72,000円
合計:159,385円
ネゴガール凄すぎる!!!
理不尽に10%値引きではなく、理論的に16%値引きです。
①設計図から部品一つ一つ抜き出して個数と見積を比較する。
②型式から単価を出して材料単価の妥当性を判断する。
③数量の食い違いから労務費を値引きする。
これらの交渉をされるとメーカー営業担当者は「NO」と言うことはできません。
自分のミスを指摘されているようなもです。
正しいことを間違っているというのと同じです。
ネゴガールの存在は会社不可欠
私の会社では一つ一つの単価が比較的高いものを扱っています。
既製品を安くするには限りがあります。
しかし、購入品は既製品ではなくワンオフ品がほとんどです。
単価や数量を少しづつごまかして上乗せしている部分はネゴガールにて
値下げすることができれば、会社の利益はその分上がります。
詳しくは、以下の記事にも記載しております。
利益率が高くなれば、会社は潰れません。
黒字経営で倒産することはありません。
黒字経営をする為にも売上原価を下げて利益率を上げる必要があります。
資材調達部の仕事はいずれAIがする?
設計者の予算内であれば、有無を言わず注文するような右から左に受け流す仕事をしている資材調達部員は高い人件費を払って働いてお貰う必要はありません。
AIを作れば、自動で見積をとり過去のデータと比較して問題なければ契約するだけで終わる仕事です。
しかし、ネゴガールのように細かく調査・計算・検討をするような人は必要です。
AIではできないことです。
設計図面を全て理解できるようなAIができるようであれば、話は別ですが、
その時になれば私のような設計も要らなくなるでしょう。
設計がいらないのなら会社の存在意義もなくなりますからね。
その時は別の仕事を探さないといけませんね。
まとめ
他部署の話題となった逸材「ネゴガール」について紹介しました。
細かく追及することで会社の為になることが分かりました。
私は設計という立場で利益を追求すると
効率的なありきたりな設計、要求された仕様ギリギリのものを作るという選択になってしまいます。
設計するからには、楽しいもの・面白いもの・遊び心があるものを作りたいと思います。
多少利益が下がろうと魅力があるものを作ります。
遊び心は設計が担当し、抑えるところはネゴガールのような人がすればいいのではないでしょうか。
ネゴガール本人は利益を出そうと思ってやっているのではなく、
会社から受けた使命として、素直に受け入れ自分ができることをやっているのだと思います。
ネゴガールと会って話をしたこともなく、社内のメールも電話もしたことがありませんが、
魅力に感じているところがあります。
ネゴガールってどんな人なんだろうと妄想する日々がしばらく続きそうです。
最後まで見てくれてありがとう!
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